2025年5月17日のブルーファルコンvsレットル佐賀の試合を分析しました。
この分析ではGKデータの深掘りに始まり、両チームのOF面での特徴やブルーファルコンのCBごとのOFデータの差を解説しています。
GKの差

両チームのGKデータを比較すると、セーブ率に5.5ポイントの差がついており、ブルーファルコンの枠内シュート率の多さからも、GKの活躍の差が一定程度は勝敗に影響を及ぼしていることは間違いないと考えられます。
両チームのGKの差についてデータを見ていく中でこの試合では「個人による安定が組織の采配を上回った」と感じました。
ブルーファルコンのGKデータ
この試合におけるGKの「個人による安定」とはブルーファルコンの中村選手のプレーを指します。
ブルーファルコンのフィールドシュートはすべて中村匠選手によるものでした。成田 翔樹選手も出場していますが、PTのシーンのみとなっています。
そのため、ブルーファルコンのフィールドシュートにおけるセーブ率のデータは中村匠選手のデータということになります。
データの特徴として中村匠選手時間帯別のセーブ率推移を見ると、試合開始から前半10分までの序盤のセーブ率が低くなっています。ただ、序盤のシュート種別を見ているとほとんどがブレイクスルーとなっており、中村匠選手のセービングによるものといった課題感のみではなく、得点率の高いブレイクスルーによるシュート機会を与えているという、DFを含めた試合の入りに関しての課題とも言えそうです。
前半15分以降の累計セーブ率は30%~40%の間で安定しており、そのプレーの質の高さがデータにもしっかり表れています。
レットル佐賀のGKデータを深掘り
一方のレットルは木村選手をスタートのGKとして起用し、後半10分頃から小峰選手に交代し、試合終了間際となる後半25分過ぎに再度木村選手に交代するといった動きとなっています。
小峰選手のプレータイムが15分程度とあまり長くないものの両者のセーブ率データを比較すると以下の通りになります。
木村選手の阻止率:21.9%(7セーブ/32本)
小峰選手の阻止率:44.4%(4セーブ/9本)
試合全体のセーブ率で比較するとブルーファルコンが32.3%であるのに対し、レットルが26.8%とレットルが劣勢となっていますが、試合序盤のセーブ率で比較するとレットルGK木村選手が前半20分までの累計セーブ率42.9%となっており、その時点のブルーファルコンGK中村匠選手の累計セーブ率33.3%を大きく上回っていました。
しかし前半20分を過ぎたころからレットルのGK木村選手のセーブ率が下がりはじめます。
この原因の一つとしては、前半20分までとそれ以降でブルーファルコンのOFの終わり方=打つシュートの種別が大きく異なっていることが挙げられます。
これに伴い、木村選手のセーブ率も試合開始~前半20分までと前半20分~後半10分頃に小峰選手と選手交代するまでの時間帯で大幅な低下をしています。
そのことを示すデータが以下の通りとなっています。
ブルーファルコンのOFの終わり方として前半20分以降はウィングのシュートが減り、ブレイクスルーによる得点が増えていることが分かるかと思います。
そして前半20分までは42.9%であった木村選手のセーブ率は前半20分~後半10分までの間は7.1%と低迷していました。

データからは前半20分以降にディスタンスの得点率が上がり、ウイングのシュートが減ってブレイクスルーのシュートが増えていることがわかります。
このことからも、前半20分以降にDFが崩されて得点率の高いシュートが多くなっている傾向が見られ、セーブ率の低下というデータがGK個人の不調ということではなく、DF全体の課題を表しているとも取ることができます。
ちなみにブルーファルコンは前半17分頃にタイムアウトを取っています。
もしこのタイムアウトでOFの戦略変更が指示されて流れが変わっていたとしたら、ベンチワークが試合の勝敗に大きく影響していることになるので、コート上の動きだけではない要素がデータに表れていることになるので面白いですね。
レットルのGK交代の采配について
試合を見ていた印象では、小峰選手への選手交代はベンチワークは正しい選択肢であったように思えましたが、データを見ると交代のタイミングとしては少し遅かったかもしれません。
さらに、小峰選手を後半25分過ぎのPTでの選手交代をきっかけとしてベンチに下げていますが、小峰選手の出場時間のセーブデータを見ると、この選手交代の戦略的な意図がどこにあったのか、気になるところです。
というのもデータを見てみると、小峰選手のプレータイムのデータを見ても決してセーブ率としては悪くない内容であることがわかります。

得点の推移を見ても木村選手から小峰選手に交代した後半10分頃の時点ではレットルが4点差で負けていましたが、後半25分までの間で2点差ビハインドまで追い付いたところで小峰選手から木村選手へ選手交代となっています。

結果論になりますが、後半25分からの5分間でPT含む5本の固め打ちに遭い、この間のGKセーブ率は0%、レットルOFも反撃していますが、試合終了時には5点差まで点差が開いてしまいました。
レットルはDFからの速攻が強みのチームであるため、残り5分2点差であれば逆転の可能性は十分にありました。
セーブ率データの視点で見ると、このGK交代の采配は一つ勝敗を分けたかもしれないポイントだったといえるかもしれません。
OF種別詳細データから見るチームの特徴

OF種別ごとの得点率の差
両チームの得点率の差を見てみると、セットOFについては遜色ないレベルとなっており、その得点率は同程度となっています。
しかし速攻による得点率についてはブルーファルコンが75.0%、レットルが31.3%と差がついています。
レットルは速攻でのボールロスト率が高くなってしまっており、しかもミスの場面が速攻で相手選手と接触しながらのボール運びといった負荷の高い場面でのミスではなく、起点となる選手からのロングパスのミスが多くなっていました。
レットルOFのセットOFによるミスが非常に少なかったことから、レットルの強みでもある速攻でのボールロストが多くなり、速攻の得点率を下げてしまったのは非常にもったいなかったですね。
当然ですが、走りながらのパスワークを必要とする速攻の方がどうしてもボールロスト数が多くなります。レットルは速攻を積極的に仕掛けるOFスタイルがチームの特徴なので、当然そのリスクを踏まえた上で準備をしてきているはずですが、その速攻による得点率が低くなってしまうといった課題が浮き彫りになりました。
速攻の得点率を下げているボールロストについて、速攻のシーンで起きたボールロストの大半(試合全体の速攻時のボールロスト5本中4本)が試合開始~前半20分までの試合序盤に発生しています。
この時間帯はシーソーゲームの様相を呈しており、1点を争う展開でなかなか試合の流れがどちらか一方のチームに偏ることのない試合展開になっていました。
勝負にタラレバはありませんが、この時間帯にボールロストとなるミスを減らせていなければ、ブルーファルコンを苦しめる展開になったいたように思われます。
フィールドシュートに関するデータの差

ここまでは比較的クセのあるデータを見てきましたが、試合の勝敗を分ける基本的なデータを比較してみようと思います。
フィールドシュート数、枠内シュート数ともにブルーファルコンの方が多くなっていますが、この試合ではレットルはPTを獲得するシーンが多かったので※、その点を加味するとあまり気にならない差であるかと思います。
※PT獲得数はレットルが7本、ブルーファルコンが2本
フィールドシュートをどれほど枠内に打てているかを示す枠内フィールドシュート率についてもブルーファルコンが93.0%、レットルが91.2%と両チームに大きな差はありません。
フィールドシュートに関するデータで差が出ているのが、フィールドシュートの得点率となります。
速攻のシュート精度が40%と低くなっており、全体のフィールドシュート得点率を下げてしまっていることがわかります。ここでもやはり、試合序盤の速攻でのミスがOFデータの差として表れています。
ブルーファルコンのセンターバックごとのOF種別の違い
ブルーファルコンOFの特徴の一つは何といっても古屋選手、田中選手というリーグトップレベルのセンターバックが多彩なOF戦術を実践するセットOFの精度の高さがあると思います。
ブルーファルコンの試合を分析する際にはいつもCBごとにデータにタグ付けをして、それぞれのCBの特徴を分析するのも楽しみの一つだったりします。
CBのタグ付けをするのはせっとOFのみにしていますので、以下のデータはすべてセットOFに関すルデータになります。
古屋選手のデータ
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田中選手のデータ
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それぞれのデータの特徴
田中選手のフィールドシュート率(OF機会をフィールドシュートとで終えた割合)のデータ85.7%と圧巻の高さですね。古屋選手・田中選手の両名とも枠内フィールドシュート率が9割超えとなっているのはしっかり相手DFを崩してシュートに持ち込めていることを裏付けているといえます。
エリア別・シュート種別のデータを見てみると、田中選手がCBとなったOFではディスタンスとブレイクスルーをバランスよく組み立てている印象を受けます。ディスタンスの得点率が72.7%(8得点/11本)と高い得点率になっています。古屋選手がCBとなった際のOFでは田中選手に比べてピヴォットのシュートシーンが多くなる傾向が見られました。
ボールロスト率で比較してみると田中選手はボールロスト率14.3%(4/28)、古屋選手はボールロスト率22.7%(5/22)となっており、田中選手の方がボールロスト率が少なくOFの安定性が高いことも分かります。