2023年7月8日のジークスター東京 対 福井永平寺ブルーサンダーの試合を分析しました。
スタッツの中からこの試合の特徴を振り返ってみようと思います。
試合終了時のスタッツ
福井永平寺ブルーサンダーのOFミス数
まず気になったのはブルーサンダーのミス数ですね。前半で8回、後半で7回(ジークスターの約2倍)、攻撃回数の合計は58回なので、OFミス率は25.9%と、この試合の敗因といえるくらいのデータになっています。ちなみに、OFミス数はOF権を失うミスやファウルを集計している項目です。
このミス数が多いというデータをきっかけに、ブルーサンダーのOF想定がどのようなものだったのかが気になり「ミスを減らすために何ができるかな」という視点から試合を振り返ってみました。
ミスの内容に注目してみると、前半と後半でミスの性質が大きく違うのがわかります。特に前半のミスはブルーサンダーによってコントロールできる要因が大きいので改善ポイントかな、という感じがします。
前半のミス
ブルーサンダーが身長の高いジークスターDFの上からディスタンスシュートを打つことを避けて、フィジカルで優位なピヴォットの落田選手へのパスを選択するも、ジークスターに対応されたしまったシーンが多い
後半のミス
後半はDFの上から打ち込んで得点に繋げた分、ピヴォットへのパスをカットされるシーンは減った。その一方でバックプレイヤーへのマークが厳しくなった(これはジークスター側のメンバーチェンジやDFシステムの変更の影響もあり)ため、バックプレイヤーがクロスアタックを受けてボールを失うシーンが増えた
前半は常にPVを意識したOFだったので、試合前から決めていたプランのように感じました。ただ、ジークスターのDFが6mラインに張り付いているような0:6DFであるのにも関わらず、頑なにPVを狙ったためになかなかパスが通らず、ミスにつながっていました。前半のミス数が8回にもかかわらず前半終了時のスコアは3点ビハインドだったので、相手DFに合わせて早めに戦略を切り替えられていれば、ブルーサンダーがリードして前半を終える展開も十分にあり得たはずです。
後半はジークスターの守り方がよりアグレッシブになっていたので、パスをインターセプトされるシーンが増えていました。これについてはジークスターがリスクを負ってボールを奪ったファインプレーもあったので、後半のミスはある程度仕方ない点もあるかなと思います。
もう少し相手DFに合わせてOFプランを柔軟に切り替えられたら、もっと面白い試合になったかもしれませんね。これは選手だけではなくスタッフ側の事前準備や試合中の見切りや指揮系統といった、スタッフの戦いでもあるので、今後のブルーサンダーに期待です。
ミス数が多いというデータをもとに振り替えると、ただ試合観戦をしているだけの時とは違う気づきが得られました。私的にはこれがデータを通じてハンドボールを見ることの楽しみです。
ジークスターOF 後半開始後の変化
せっかくなのでジークスター側のポイントと思った点も掘り下げてみようと思います。
前半のジークスターのOFは、身長差のあるマッチアップでも安易に9m外からのディスタンスシュートを選択せずにしっかりとブルーサンダーのDFを崩している印象でした。実際に9m外からのシュートは少なく、DFを崩せているからこそ、特に左ウイングは広い角度からシュートを打てていました。
多彩なOFで前半の主導権を握ったジークスターでしたが、後半の入りはOFが単調になった印象です。この点について、ジークスターOFの後半開始から15回分のOF結果を見てみると、内訳が下記の通りになっています。
後半開始からOF15回の内訳
ディスタンスシュート:8(0得点)
サイドシュート:2(0得点)
カウンター速攻:1(0得点)
リバウンド:2(2得点)
OFミス・OFファウル:2
この15回のOFの間わずか2得点となっており、その2点の得点もシュートリバウンドを得点したものなので、OFの狙い通りの展開とはいえない後半の入りでした。またこの間でブルーサンダーに同点に追いつかれ、逆転を許しました。
前半OFと後半OFの比較
前半と後半を比較すると、前半のほうが理性的に組み立てられていたような印象です。後半はブルーサンダーが機動的なDFに切り替えてきたので前半と同様の傾向にならないのは仕方ないかもしれませんがが、そうであればディスタンスシュート以外のシュート分布が増えてもいいのかなとも思います。ピヴォットやウィングを活躍させられる攻め方ができればまた違う試合展開になっていたかもしれませんね。
個人分析
ジークスター
ミドルシュートの成功率が低かったのでバックプレイヤー3名をピックアップしてみました。
枠外シュートが多いので、これは改善すべきポイントかもしれませんね。(ゴールポスト直撃となったシュートも枠外カウントしています。)
ブルーサンダー
重藤選手と藤坂選手の2名でブルーサンダーの得点全体の半分を取っていました。2名とも厳しいマークにあいながらもシュート確率が80%を超えており、この2名をどれだけ抑えるかが、ブルーサンダーの対戦相手にとっては重要になります。
シュート種類別、シュートを打つエリア別に見てみると、少し癖が見えてきます。
1試合分のデータではまだわからないところも多いですが、これを何試合も分析すると選手の癖がよりはっきり見えてきてGK的には面白いデータになってきます。